-
■書籍出版の背景
当グループが10年以上にわたり地域医療に携わる中で得た知見から、地域医療の発展の鍵は「在宅医療」にあり、なかでも「在宅看護」という新たな概念がその中心となると確信しました。
私たちは、「地域に暮らす人々のよりよい生活と人生のために——こころとからだに、ぬくもりとやさしさを——」を理念に掲げ、「人々に最適なヘルスケアを提供すること」を使命としています。その実現のため、「在宅看護」の普及と「在宅看護師」の育成をミッションとし、この想いを広く伝えるべく、本書を出版する運びとなりました。 -
■医療専門職・現役看護師・看護学生に伝えたい
“看護の新しいあり方”本書では、在宅看護はどういったやりがいや学びがある仕事なのかを、在宅看護師として必要なスキルとは何かを、実際に在宅看護師として働くスタッフたちのエピソードや、当グループにてお看取りをさせていただいたご家族へのインタビューとともにご紹介しています。



紀伊國屋書店横浜店にて書籍総合ランキング1位(2025年4月21日~4月27日)を取りました。
(画像提供:プレジデント社)
本を読んだ方のご感想
在宅看護師の本を読んで、一番心に残ったのは「倫理観を押し付けず、みんなが納得できるように」という言葉でした。これまでずっと感じていたモヤモヤが、はじめて言葉になった気がして、大きな気づきがありました。
30年ほど前、ほんの少しだけ在宅の現場に関わったことがあります。
喫煙を好まれる利用者さんがいらして、私はその方の気持ちも大切にしたいと思っていました。けれど、当時の自分にはその想いをどう扱えばいいのかもわからず、先輩看護師が「煙草は控えてください」と繰り返すのを、黙って見ていることしかできませんでした。
その数年後、母が胆管がんと診断され、自宅での療養が始まりました。
けれど当時の私は、在宅看護の知識も、心の余裕もなく、「もっと話したい」「聞きたい」と思いながらも、何をどう聞けばいいのかもわからず、結局あいまいなまま時間が過ぎていってしまいました。
食事がとれなくなり始めたころ、母の好きだったワインを少しだけ飲ませたことがあります。そのときの母のうれしそうな顔は、今も鮮明に覚えています。
でも、ふとしたときに思うのです。
「本当はどう思ってたのかな」
「もっとちゃんと聞いておけばよかったな」っと思っていました。
最期が近づいていることに気づきながら、怖くて問いかけられなかったこと、
気づかないふりをしてしまったこと、その小さな積み重ねが、今もじんわりと後悔として残っています。
だからこそ、この本に書かれていた「価値観を押し付けていては、伴走することはできません」という一文に、深くうなずきました。
あのとき私ができなかったことを、今、誰かが「できる」ように支える側にまわりたい。
そんな静かな思いが、自分のなかに根づいていたことを、この本を通して改めて思い出しました。